Little AngelPretty devil
      〜ルイヒル年の差パラレル

   “いろんなものをぶっ飛ばす そういう日
 

 
今年の寒さは いつだったかに記録的と騒がれ
“一八豪雪”なんて名付けられまでした頃のよりも凄まじいのだとかで。
東京の都心でも雪が舞うのは、
ひところに比べればさほど珍しいことじゃあなくなって来たけれど、

 「夏は夏で目茶苦茶暑いのにって思うとサ、
  尚のこと、何でだろって不思議なんだよね。」

ふわふかな頬を赤くして、口許から出る吐息を白くけぶらせ、
無邪気なお話をしてくれるお友達のお言葉へ、

 「お前にしちゃあ鋭いところに気がついたよな。」

仲良しの坊やがそんなお言葉を返してやり、

 「え〜、なにそれ。」
 「だってよ、お前、夏になんて言ってたか忘れたか?」

  このまま毎日この夏一番の暑さですが続いたら、
  夏休みが終わるころには60度とかになっちゃうんじゃないかって、
  そ〜んなお馬鹿なことを言ってたんだぜ?

  あ〜、それは一年生より前の話じゃないかぁ。/////////

いつもいつまでも同じ話を引っ張り出して来ては、
小さなお友達をからかう、金髪の子悪魔さんだが、

 「……で、ゴーグル持って来いって言ってたのは、
  今年はセナも混ぜてくれるからなの?」

ぷうるの時にしか使わないから、どこ行ったか判らなくて、
ママに言って探してもらったの、と。
かわいらしい小ぶりのそれ、
ゴムキャップにアクリルのレンズがついた
子供用のゴーグルを出して見せたセナくんへ、

 「ああ。去年、傍で見たいって言ってたろうが。」
 「うんっ!」

小さな背中へ負ったランドセルの肩ベルト、
モヘアの手ぶくろ越しに小さな両手でぎゅうと握って、
わぁいvvと見るからに嬉しそうなお顔になったセナくんが見やった、
すぐお隣を歩くお友達の手元には、

 「ったくよ。
  こうまで寒いとチェンバースプリングが固まっていけねぇや。」

なぁんて、一丁前な言いようをしつつ、
結構 銃身の長いそれ、
“得物”と言いますか、武装と言いますかの点検を。
こちらさんもデイバッグを背負っていて
両手が空いてるのをいいことに、
てきぱきと歩きながらこなしておいでの おっかなさであり。

 「あらまあ、最近のプラモデルってよく出来ているのねぇ。」

ゴミを出しにとお外に出ていたお母様がたの目に入っては、
そんな感心をされてしまうのも毎度のお話で。
さすがに、

 「でも、学校へ持って行くなんていいのかしら。」

という方向での案じるお声も出なくはないが、
そこはそれ、
いじっている子が あの子であるもんだから、

 「あらあら、きっと卒業式関係の劇の発表会とかに使うのよぉ。」
 「そうよねぇ。」

何しろ、おばさん おはようざいますと、
視線に気づいてか、お顔を振り向けて来る坊やの風貌が、
これがまた 何とも愛らしいたらありゃしない。
寒さの中に降りそそぐ
冬の陽射しにやわらかく照らされた金色の髪は軽やかにそよぎ、
白い額や涼やかな双眸、
小さいながらもすっと通った鼻梁に
野ばらの蕾を思わせる、口角の引き締まった口許と来て。
あ〜んな賢そうな坊やですもの、
親御さんやせんせえを困らせるようなこと、しでかす筈がなかろうし。
伸びやかな四肢は女の子みたいにすっきりしていて、
そこへ備わった仕草の数々もなかなかに洗練されていて。

 「子役とかモデルの経験もあるって話だし。」
 「そっか、じゃあ学芸会なんかじゃあ、
  難しい役もやれるって見込まれることも多いのでしょうよね。」

なんていう お気楽な解釈の下、
多少の不審な挙動くらい、あっさり見逃してもらえるなんてのは、

 「…あれもまた“人徳”かなぁ。」
 「あのな。」

小学生に“人徳”なんてもんが根付いててたまるかいと、
口許をへの字にひん曲げたのが、たまたま通りかかった賊学大のアメフト部員、

 「たまたまかどうか。」
 「だよなぁ。」

総長こと主将の葉柱ルイに
高等部時代から惚れ込んでの進学した者らが多い中。
双璧として彼の膝下を支える二大巨頭、
ツンと銀とに言いつかり、
日頃使いのじゃあないコンビニまで
期間と地域と数量限定の弁当を買って来いと言い付けられたる、
一回生部員二人であり。
それがこちらの小学校の
通学路途中とかぶっていることへ気づいた彼らとしては、
ああもしかして、
自分らと縁の深い子悪魔坊やの様子を見て来いという
含みがあるらしいなということまでは気が回ったもんの。

 「これってあれだ、今日があの日だからだぜ。」
 「あの日?」
 「馬鹿。お前ピンと来ないか、あの装備見て。」

引けば しゃこんっと音立てる、
銃身の脇にスライド式のチェンバーハンドルが突き出ている旧式のそれは、

 「マシンガン…。」
 「しかもあの坊主が持ってんだぞ? そして今日は」
 「節分だ……。」

やっとのこと、1つ1つのフレーズが繋がったらしき一回生坊主。
これってつまり、ツンさんや銀さんが、
あの小僧が今年も何か企んでる“豆まき”になるんじゃなかろかと、
一応は先んじての斥候にと、彼らを出したんじゃあなかろうか。

 「今年もやんのか、あの馬鹿騒ぎ。」
 「みてぇだな。」

炒った大豆を弾丸に詰めた、
エアガンとはいえ結構な威力のマシンガンで、
一方的に追いまくられつつの
ランニング&各種トレーニングとなるおっかない日。

 「メグさん辺りは、
  寒さで身がかじかんでの怪我人が出てなくもないからって、
  この時期のこの騒ぎに好意的だしな。」

 「うう…。あれって痛いんだよなぁ。」

高等部時代からの恒例行事だ、
昨年は当事者たる坊やがくっついてる葉柱が大学部に進学したからと、
居残った下級生らは何かと一息つけていたのだが、

 「……でも、なぁんか気が抜けてた一年間でもあったよなぁ。」

先輩方が残してった練習メニューや方針をそのまま引き継いでの、
真面目な練習に明け暮れたお陰様。
引き続いて関東大会に出られるレベルは、何とか維持出来たものの。
今ひとつピリッとしなかった、
下手を打つと元の愚連隊に戻りかねないような、ダラけようになりもして。

 「あれだって、
  あの坊主がルイさんを足代わりにって
  わざわざ高校近くまで呼び出したりして、
  そいで俺らんコトびびらせたから、
  破綻しなかったようなもんだしな。」

 「う〜ん…。」

あんな小さいガキに尻叩かれてるのが癪じゃああるが、と。
ただただ馬鹿々しいだのやってられっかだのとならず、
そういう方向での洞察が出来るようなら、
なかなかの人性だ、心配は要るまいよと。
双璧殿らが下級生らの心意気へ
安堵の声を漏らすのはもうちょこっと後の話だが。

 「セナもマシンガンさわっていーの?」
 「おうよ。軽いのも持って来てあんぞ?」

あいつら せいぜい蹴散らしてやろうぜと、
放課後が今から楽しみらしい おちびさんたち。
まだまだ寒い日が続きますが、
どうか元気で乗り切ってくださいませね?





   〜Fine〜  12.02.03.


  *総長さんのBDはうっかりスルー仕掛かったくせに、
   節分といえば…は忘れないってどうよ。
(笑)
   今年も過激な鬼ごっことなるらしく、
   インフルエンザでの学級閉鎖にならんほど
   そりゃあお元気なおちびさんたちの、
   溌剌さに、ガッツリあやかってくださいませです。


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